AIの遺電子
作者 山田胡瓜
出版社 秋田書店
掲載誌 少年チャンピオン
こちらの作品は、近未来の日本を舞台にしたSF作品です。
登場人物は、人間だけではなく、ヒューマノイドやロボットも普通に出てきます。
いわゆるAI技術が、この先さらに進歩していったら将来はこのようになるのではないか、と思わせてくれる世界観です。
とはいえ、ヒューマノイドやロボットがバチバチに闘うようなアクションものではなく、あくまで登場人物たちの掛け合いが主なヒューマンドラマです。
主人公は人間の医師で、その彼の元にいろんな悩みを抱えたヒューマノイドが訪れ、診察や治療を受けて行くのですが、その悩みというのが、ヒューマノイドだからこそ抱えるものだったり、人間との違いから生まれるものだったりとさまざまなモノがあります。
基本、1話ごとのオムニバスストーリーで、それぞれに自分なりの考察を入れながら読むのも、ただ単にエンターテイメントとして読むのも自由です。
ですが、もしも自分だったらどうするか、という目線で見るのが1番面白いのかもしれません。
近未来を描いているAIの遺電子ですが、登場人物が他人との違いに悩んだり、現状のあり方に悩んだりするのは、現代社会にも通ずる所が多少なりとはあるような気がしますね。
AIの遺電子は全8巻で、続編として『RED QUEEN』が全5巻、さらに続編ですが、AIの遺電子の前日譚の『Blue Age』が続刊で3巻まで出ています。
『AIの遺電子』を1話完結物のアニメとするなら、『RED QUEEN』は海外ドラマみたいで、『Blue Age』は医療ドラマを見ているように感じます。あくまで私の主観ですが。
タイトルであるAIの遺電子の『AI』は、エーアイではなく、アイと呼びます。
さらに遺電子も、『伝』ではなく『電』を用いている所がいろいろと考えさせてくれる、非常に素晴らしいタイトルではないでしょうか。
最近聞いた話ですが、AI技術のシンギュラリティが2045年には起きるのではないかと言われているそうです。
シンギュラリティとは、技術特異点、つまり、人工知能が人間の知能と並ぶか超えるかし、私たちの生活や社会が変わる地点を指す言葉です。
これまでものすごい勢いで進んできた技術が、もしかしたらさらに加速するかもしれませんし、そこまで行かないかもしれません。
シンギュラリティはありえないと否定する方もいるようですし、あと20年以上後とはいえ、まだまだ雲を掴む話のようです。
まあ、有名な映画である、ターミネーターやマトリックスみたいにならなければ良いですね。
ちなみに私は去年やってたアニメの『VivyーFlourite Eye's Songー』がお気に入りです。見た事ない方は、是非ご視聴をお勧めします。
AIの遺電子は、シンギュラリティが起きた後の世界を描いていますが、私たちの世界線ではどうなることやら。
作者の山田胡瓜さんは、映画監督の押井守さんを始め、いろんな人と対談をされいますので、それらも是非目を通していただければと思います。